wnabetanの日記

2018.11〜 オックスフォード大学でのポスドク生活

フィールドワーク・ワークショップ

先日、学内の社会科学部門主催のワークショップ"Insiders' guide to practical fieldwork"へ参加してきました。 博士課程5年間で自分なりにフィールドワークを実施してきたものの、良くも悪くも我流であり、他の人の経験談を聞くことのできるこの機会は非常に貴重であり、学びの多いものであったと感じたので、内容をまとめてみました。

ワークショップの概要

(まだ学校の全体図はつかめていないものの)社会科学研究を統括する部門の主催で、定期的に、組織的に(ランチとしてサンドイッチが振る舞われた!)行われているようだ。フィールドワークの経験のある2名のDPhil学生がspeakerとして進行しつつ、speakerだけでなく参加者各々が自らのフィールド経験談を共有し、フィールドワークの現場で発生する様々な課題を検討した。

参加者は人類学をバックグラウンドとする人が中心であったものの、政治学や国際協力といった分野からの参加者も見られた。対象地域としてはインド、アフリカ、中国、中東といった地域が中心。よく考えてみれば当然のことなのだが、自分のルーツの国・出身国を対象として研究している人が半分くらい(そういうこともあってか、出身国を対象としてフィールドワークをすることのメリット・デメリットも議論にあがった)*1

フィールドワークを実際に行う上で大切なこと

議論の全体を紹介するのは避けるが、議論の中で強調されたのは

  1. どんな事態にも対応できるよう、緻密な準備をせよ(Plan B, C, D, ... を準備せよ!)
  2. うまくいかないこと・不安があるのは当然。その度に改善していくのが大切だ
  3. 身の安全が何よりも大切

という3点であった。

基本的に論文、書籍の形でみる研究は、整っていて完璧に行われたように見える。しかし、その背後にはいくつもの想定外があり、それを乗り越えて形にしたという努力があるのである。先人が行なったその努力に敬意を表するとともに、勇気をもらった。準備は本当に大変だと思うが、万全の備えをして、フィールドに行ったら想定外を喜んで引き受け、当然だと開き直って漸進的に取り組んでいくのが良いように感じる。

その他、議論で取り上げられたテーマのメモ:

  • location: 調査地、調査対象
  • 事前準備: 現地とのネットワークを活用し、適切な調査地の目星をいくつかつける
  • 調査地についてまずやるべきこと: ローカル・コンタクトを利用し、現地の最新情報を収集
  • 相手にthreateningにならない形で自らのリサージ・アジェンダを伝える能力が調査の成否の鍵になることが多い
  • 正直であれ/プロフェッショナルであれ
  • 自らの立ち位置・相手からの見え方に注意せよ
  • 質問を行う際の注意事項: 話の順番・インタビューの場所
  • consent form; letter of introduction: 正直に、簡潔に、外交的に
  • 研究助手、通訳、gatekeeper: 見つけ方/彼ら自身の社会環境に配慮/報酬問題/契約問題
  • 研究倫理: とにかく準備は早く、合意の重要性
  • 現地社会と研究者、インタビューとオフレコなどの線引きの難しさ
  • 住居: 安全第一&自らに正直であれ
  • パイロット調査の重要性: 手法により様々なやり方があれ、必ずやるべき
  • うまくいかないインタビューの傾向: 質問項目がtoo-openended, too-broad
  • レコーダーを使うかどうか
  • 情報管理の方法
  • 日々の過ごし方: データを整理、まとめる時間は大切/バーンアウトしないように

最後に、反省

お昼休憩が45分ほどあったものの、9:30〜15:00までがっつり議論をしたので、結構へとへとに... といっても、グループワークを除くと自分はほとんど発言できておらず、口は疲れていなかったと思う。典型的な日本人のビビり方だと思うので、もっと議論に参加していけるように努力していかねば。

*1:ルーツもなく、出身地でもない地域の研究というのはやはりハンディがあるし、「なんでやってるの?」と聞かれることも多い。マイノリティである反面、貴重な存在であるのかもしれない。