海外ポスドク生活: 学内セミナーに参加
新しい学期(Hilary Term
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)が始まって2週間。
学期中は自分の研究・共同研究を進めつつ、各部局で開催されるセミナーに参加している。
私の主な所属は中東研究センターだが、比較政治学・国際政治学とも密接に関連する研究を行っているので、他の部局のセミナーにもできる限り足を運ぶようにしている。 一部、事前登録が必要な場合もあるが、基本的にはどのセミナーも公開のものであり、気軽に参加することができる。
今週は4つのセミナーに参加した。中東研究関連が1つ、国際政治学関連が2つ、そして比較政治学関連が1つ。
開催の部局は中東研究センター、ロシア・東欧研究センター、政治・国際関係学部だった
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中東関連
MEC Friday Seminar - The Middle East: Should We Give Up? - Oxford Talks
by Joost Hiltermann (International Crisis Group)
オックスフォード大学中東研究センターのFriday Seminar Seriesの一環として開催された。毎週金曜日の17時より、大学内外から講演者を呼び、公開の講演会が催されている。
この日は世界的なシンクタンク、インターナショナル・クライシス・グループ(以下、ICG)で中東・北アフリカグループのプログラム・ディレクターを務める、Joost Hiltermann氏による講演であった。
中東地域情勢を図式化して説明しているところが非常にシンクタンクの研究者らしく面白かった。そして、その図式を軸としながら展開される質疑応答の盛り上がりが非常に印象に残った。特に、中東北アフリカ地域出身の参加者(学生・研究者・外部からの参加者と多様であった)が、現地の視点からこれに疑問をぶつけていく様子が非常にイギリスらしく感じられた。さすがは世界中から人が集まる大帝国。
国際政治学関連
World Politics 100 Years after the Paris Peace Conference - Oxford Talks
by Margaret MacMillan (University of Oxford), Rosemary Foot (University of Oxford), John Ikenberry (Princeton University), Louise Fawcett (University of Oxford)
イギリスが誇るシンクタンク、王立国際問題研究所(Chatham House)の後援のもと、著名な国際政治学者を集めて開かれたセミナー。
第一次世界大戦の講話のためにパリ講和会議が開かれてから100年。このセミナーの主題は、歴史をきちんと踏まえ、国際政治の理論との対話を行っていこうというモチベーションのもと、グローバル化やAIの発達といった変化に見舞われる今日の国際関係について、パリ講和会議を起点に考えてみようというものだった。
これは本年1月4日に刊行されたInternational Affairs誌の特集号(Vol.95, No. 1)が扱った内容であり、その編者が中心となって講演が行われた。国際政治の教科書で名前を見たことがあるような研究者が目の前に...。(ということばかりなので感覚が少し麻痺してしまっているが。)
どうすれば自由民主主義liberal democracyを守っていけるか、といった極めて大きく・特定の価値にコミットした問いが、所与のものとして議論されていたのが印象に残った。これもまたイギリスの特徴と言えるのだろうか。
政治・国際関係学部のランチ・セミナー
(サンドイッチなど)美味しいランチが振る舞われる中(!)、博士論文を提出したばかりの気鋭の研究者から研究発表が行われた。未公開研究なので内容への言及は避けるが、博士論文を出したばかりという、私と同じステージにいる研究者から話を聞くことができたのは非常に刺激的だった。
比較政治学関連
ロシア・東欧研究センター主催のセミナー
こちらも未公開研究のようなので、内容への言及は避ける。 経済畑の研究者らしいデータへの目の付け方が興味深かった。もちろん、ちょうど使いやすいデータだったというのもそのデータが選択された理由ではあろうが、そこには報告者本人のロシアでの経験の裏付けがあった。
データを弄っただけ、などという批判はお門違い。計量分析と地域研究の間には生産的な対話の可能性が広がっている。